第29回

                                              2019.3.2.

アジェンダ(敬称略)

1.「セミナ―再開のご挨拶」中島晃(NHラボ代表)

2.「中島平太郎さんの予測と実際」高田寛太郎 (NHラボ)

3.「音楽メディアとしてのYou Tube」中島尚(元ソニー/スタートラボ)

4.「手造りコンテンツによる試行と公開」田中和彦(武蔵野メディア研究所)

5. デモ 「弦奏®」小林功児(弦奏JAPAN)


1.中島晃代表のご挨拶

  (前回セミナ―直前、インフルエンザのため参加できず、今回改めてセミナ―再開のご挨拶を行いました。)

 

昨年の625日、日本オーディオ協会とソニーOBが中心になり。父(平太郎)を偲ぶ会をホテル雅叙園東京で開いていただきました。

 

会には父と交流のあった、日本オーディオ協会、NHK、日本音響学会、レコーディング業界、出版社、ソニー、太陽誘電、ビフレステック、三菱ケミカルなどの関係者およそ200名が参加されました。参加された方および運営に当たった方々に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

その際、私は父が亡くなる直前の、皆さんがご存知ない父とのエピソードなどをお話致しました。

 

私は、オーディオの研究、開発等に関しましては専門家ではございませんが、オーディオに関する特許の調査などに10数年従事してまいりましたので、NHラボに何らかの貢献ができるのではないかという思いと、父のオーディオに対する情熱を少しでも引き継ぐことができないかという思いで、父の没後はNHラボの代表を父に代わって私が引き継いでおります。

 

そんな中で、昨年春以来中断していたセミナーの開催を望む声が外部からちらほら耳に届くようになり、ラボ内でもセミナ―再開のプランを話し合ってきました。その中心となることは、父亡き後、セミナーの魅力は何だろうかということでした。

 

これに対して、外部の方から「中島平太郎さんが亡くなったこれからは、平太郎さんの遺志を受け継いでいるラボのメンバーに、オーディオをディスカスする場を用意していただければありがたい。このような場は他にはなかなか見いだせない」という声がよせられました。

 

そこで、NHラボ内でディスカスを重ねた結果、次の2つの考えのもとにセミナーを再開することにいたしました。

 

1.父(平太郎)の求心力をベースに成立していた今までのセミナーの進め方から、父(平太郎)の志(想い)を元にして、NHラボメンバーと,父の仕事に何らかの関係のあった参加者の皆さんとでセミナ―を作り上げるという形にできないか?

2.セミナーはNHラボメンバーが主体で進めますが、父の仕事と何らかの関係のあった外部の方々の技術、知識、経験を皆さんに紹介していただき、オーディオ談義する場にできないか?

というものでございます。

セミナーの企画案については、参加者の皆さんのご意見を拝聴して作り上げてゆきますが、どのくらい魅力的なセミナ―にできるかがカギとなると考えます。

 

このような考えでNHラボセミナーを再開致しますのでよろしくお願い致します。

 


2.中島平太郎さんの予測と実際  高田寛太郎

 

常に先を見て仕事をされていた中島平太郎さんが、過去幾度かのターニングポイントで見据えられた技術の将来像とそれが時代を下ってどのようになったかを簡単にレビューした。

1968年にNHKで世界発のPCMレコーダを発表した後のデジタルオーディオ技術の研究開発計画。

中島さんによると「テープ媒体のデジタル研究のめどがついた。その記録部分についてはビデオ記録機の、その伝送部分についてはTV伝送システムの導入によってデジタル化が可能となる。オーディオシステムのマイク出力からマイク入力までのすべてがデジタル化される夢が現実のものとなる。」と予測されている。

 

現在これらのすべてが現実となっている

1982年、CDの発売直後にオーム社から出版した「コンパクトディスク読本」では、CDの詳しい解説がメインだが、後半には「オーディオの将来」を考える章が書かれ、CD以降のソフトがどうなるか、ソフトの音質向上はどうあるべきか、そして、インターネットが普及する前だがCATVを用いたデジタルオーディオ伝送にも言及されている。

1986年出版の「CDオーディオ談義」では「ソフトがすべてデジタルになる」ことを予想されている。その締めくくりとして「アナログの音質改善に限界を感じて取り組んだデジタル処理ではあったが、デジタル化が進みその行く先が見えてきた段階で改めて全システムを見直してみると、スピーカやマイクロホンなど、当分デジタル化できにくい電気音響変換器の改良、マイクのセッティングを含む収音システムやスピーカの配置を含む音響再生システムなどのアナログ系の再検討に戻ってこなければならないようである。いうまでもなく、私たちが楽しもうとする音楽や音声も、それを聴く聴覚系も、すべてがアナログである以上、このことは当然の帰結であろう」と書かれている。

常にアナログとデジタルの両方を考えられていた。

2008年に出版。先のコンパクトディスク読本の発展版。この間26年。CDR、DVD、ブルーレイなどの光ディスクメディアが商品化され、我々の生活の中に浸透した。

この本の最後には「将来の展望」が書かれ「光ディスクの発展のために」という項には次の2つの図が書かれている

次に来るネットワーク時代を想定し、光ディスクの位置づけを模索しつつ、「光ディスクを必要とするエンタテイメントが少なくなりつつあることも事実です」とクールに将来予想されている。

CDの国内生産量は1997~98年をピークに年々減少し続けている。今年のグラミー賞最優秀アルバムに米国内でCDとして発売されなかったものが2作品選ばれた。

 

中島さんの将来予想を物語っている。

ソフトメディアの変遷を表した図。(右側の赤文字で記した通信部分は事務局が追加)

 

「光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリーはデジタル化の波に乗り大きく飛躍した。一方デジタル化に乗り遅れたメディアはフェードアウトを余儀なくされた。」と説明。

そのメディアに記録され伝えられるソフトは、右側の通信や放送のインフラにもなじみ、様々な形でユーザにとどけられるようになった。50年前に中島さんが描いた将来像はこの図の中に散りばめられている。

 


3.音楽メディアとしてのYOUTUBE  中島尚


4.手造りコンテンツによる試行と公開 田中和彦

 

前半は武蔵野メディア研究所(MML)の紹介。

詳しくはこちらをご覧下さい。

ご覧になって下のアドレスにメールを送るとコンテンツが追加された際に連絡を頂けるとのことです。

 

 

後半ではハイレゾに関する興味深い説明があり、後日同研究所のホームページで紹介されるとのことです。

 

 

また懇親会ではVRゴーグルを用いたデモがあり、田中氏の作品のいくつかをVRゴーグルとFinal製ヘッドホンで楽しむことができました。(繭の色の演奏会ほか)


5. デモ 「弦奏®」 小林功児

 

楽器に取り付けて、楽器を鳴らす「弦奏」のデモをしていただきました。

これは自動演奏ではなく、音楽ソフトのアナログ信号を弦奏に加えると発生する振動を楽器に伝えることで、楽器から音が出る仕組みです。「楽器がスピーカになる」とも言えるのではと思いました。当日のデモはギターと古い蓄音機で音を出していただきました。

小林氏は、田中和彦氏が所属する協会の賀会でデモをされたこともあるそうです。

http://ghensow-japan.co.jp/?p=5246